日本歯科保存学会 名誉会員証授与式および各賞の表彰式

日本歯科保存学会2021年度春季学術大会(第154回)・秋季学術大会(第155回)およびは、新型コロナウイルス感染症感染状況を鑑み、現地開催中止・Web開催となりました。

現地開催中止に伴い、学術大会時に執り行います名誉会員証授与式および各賞の表彰式も、誠に残念ながら中止となりました。

会員の皆様の前で表彰する機会がございませんでしたので、ここに新名誉会員および各賞の受賞者の先生方をご紹介申し上げます。

昨年度に引き続きホームページ上でのご紹介となりましたが、一日も早い新型コロナウイルス感染症の収束を願いますとともに、会員の皆様とお会いできる日を心待ちにしております。

特定非営利活動法人日本歯科保存学会
理事長 石井信之

※50音順・敬称略
※受賞者の所属および職については申請・推薦時のものです。

名誉会員

荒木 孝二 前理事
所属
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・教授
就任コメント

この度、日本歯科保存学会の名誉会員及び学会賞にご推薦・ご承認いただき、大変光栄で名誉なことと石井信之理事長をはじめとします学会会員の皆様に心から御礼申し上げます。大学卒業後すぐに歯科保存学教室(歯内治療学専攻)の大学院に進みました。1980年のことです。以来2021年3月に大学を退職するまで40年以上にわたりお世話になりました。日本歯科保存学会は、その名称通り「歯を保存する」ために教育、研究、診療にかかわっている方々の学術団体です。80歳以上の高齢者の人口が今後も漸増していく我が国において、できるだけ口腔内に機能できる歯を残して、自分の歯で食べていくことの重要性が疫学的にも科学的にも立証されてきています。歯科衛生士を学会員として迎え、さらなる連携を図っていく事業も開始されています。また、歯科保存治療は、学会員だけでなく、我が国の地域医療を支えている多くの歯科医師・歯科衛生士との協力もますます求められていくと思っています。日本歯科保存学会が今後さらなる国民への情報提供などを積極的に行う開かれた学会となり、発展されていくことを心より願っております。

東京医科歯科大学名誉教授
荒木孝二

荒木 孝二 前理事

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田上 順次 前理事長
所属

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・教授                    

田上 順次 前理事長
廣藤 卓雄 前理事
所属
福岡歯科大学・教授
就任コメント

この度は、日本歯科保存学会名誉会員証拝受ならびに、2021年度日本歯科保存学会学会賞受賞の栄に浴しました。石井信之理事長を始めとする、学会会員の皆様に心より厚く御礼申し上げます。また、長年にわたり一緒に教育、研究・臨床活動を行ってきた福岡歯科大学総合歯科学講座スタッフの皆様にも深謝いたします。昭和56年の日本歯科保存学会入会より、諸先生方から何かとご指導・ご鞭撻を賜って参りました。本来ならば拝眉の上ご挨拶申し上げるべきところでございますが、今年の学会もWeb開催となり叶いませんでした。この場をお借りしてご挨拶に代えさせて頂きます。定年退職後、しばらくのんびりしておりましたが、高齢有病者、障害者の方々への口腔管理活動を再開いたしました。歯や歯周組織の保存管理に関する教育・研究・臨床の発展が、歯科医学のみならず全身医学の発展の原動力になり、ひいてはQOLの向上につながると、現場に立って再認識する日々です。微力ながら地域医療に貢献できればと思います。
コロナ感染の収束はまだまだ先が見通せない状況ではございますが、日本歯科保存学会の益々のご発展と会員の皆様のご健勝とご活躍を祈念いたします。

福岡歯科大学名誉教授 廣藤卓雄
(前・福岡歯科大学総合歯科学講座総合歯科学分野教授)

(写真)廣藤卓雄(左)と阿南壽・前日本歯科保存学会副理事長(右:福岡歯科大学歯科保存学分野教授)

廣藤 卓雄 前理事

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2021年度日本歯科保存学会学会賞

荒木 孝二 前理事
所属
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・教授
受賞コメント
同上
田上 順次 前理事長
所属
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・教授
廣藤 卓雄 前理事
所属
福岡歯科大学・教授
受賞コメント
同上

2021年度日本歯科保存学会学術賞

竹中彰治
所属
新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔健康科学講座 う蝕学分野
応募論文
Sulfated vizantin causes detachment of biofilms composed mainly of the genus Streptococcus without affecting bacterial growth and viability
Taisuke Hasegawa, Shoji Takenaka, Masataka Oda, Hisanori Domon, Takumi Hiyoshi, Karin Sasagawa, Tatsuya Ohsumi, Naoki Hayashi, Yasuko Okamoto, Hirofumi Yamamoto, Hayato Ohshima, Yutaka Terao & Yuichiro Noiri
BMC Microbiology 20:361(2020年発表)
上記他4編
受賞コメント

栄誉ある日本歯科保存学会学術賞を賜り、大変光栄に存じます。選考委員の先生方はじめ関係者の皆様に心より御礼申し上げます。う蝕は、バイオフィルム感染症であり生活習慣病です。私は「口腔バイオフィルムとの共存」をコンセプトに、殺菌ではなく、”口腔細菌叢を変動させずにバイオフィルム構造を分解する”新しい制御戦略の開発に取り組んできました。一連の応募論文は、その候補物質の1つである硫酸化ビザンチンの作用機序を報告したものです。ビザンチンは、単一の化合物として免疫活性化作用を示す糖脂質トレハロース-6,6-ジコリノミコレートをリード化合物として、京都薬科大学の小田真隆教授と徳島文理大学の山本博文教授により創製された糖脂質です。口腔バイオフィルムを殺さず剥がす性質がビザンチンにあることを偶然にも発見したことから本プロジェクトが始まりました。臨床応用へ向けて開発研究を進めていきます。最後に、研究遂行にご指導賜りました野杁由一郎先生、ビザンチンを知るきっかけとなった小田真隆先生、山本博文先生、これまでの研究の発展に多くの助言をくださいました共著者の先生方に厚く御礼申し上げます。

竹中彰治

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水谷幸嗣
所属
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野
応募論文
Poor oral hygiene and dental caries predict high mortality rate in hemodialysis: a 3-year cohort study
Koji Mizutani, Risako Mikami, Tomohito Gohda, Hiromichi Gotoh, Norio Aoyama, Takanori Matsuura, Daisuke Kido, Kohei Takeda, Yuichi Izumi, Yoshiyuki Sasaki & Takanori Iwata
Scientific Reports,10(1),21872 (2020年発表)
上記他4編
受賞コメント

栄誉ある本学会学術賞に選出していただいたこと、大変光栄に存じます。本学会理事長はじめ関係皆様に心より御礼申し上げます。
これまで、糖尿病や慢性腎臓病を中心に全身と歯周病との関わりについて研究をしてきました。今後も、歯科医療が口腔の健康維持だけでなく、からだ全体の健康にどのように寄与できるか、歯周病治療の観点から一層研究に励みたいと思います。
本賞は私ども研究チーム全体へ与えて頂いたと感じております。御指導・御鞭撻賜りました石川烈先生、和泉雄一先生、岩田隆紀先生、青木章先生、ハーバード大学ジョスリン糖尿病センター George King 先生はじめ、国内外の共同研究者の先生方、支援いただいております関係皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

水谷幸嗣 水谷幸嗣

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2021年度日本歯科保存学会奨励賞

枝並 直樹
所属
新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔健康科学講座 う蝕学分野
応募論文
Impact of remnant healthy pulp and apical tissue on outcomes after simulated regenerative endodontic procedure in rat molars
Scientific reports (2020) 10:20967
研究発表
なぜRegenerative endodontic proceduresは多様な治癒形態を生じさせるのか
-ラット根未完成臼歯における免疫組織学的研究-
(2019年度 秋季学術大会発表)
受賞コメント

この度は日本歯科保存学会奨励賞という名誉ある賞を頂戴し光栄に思います。近年注目されているリバスクラリゼーション(歯髄血管再生療法)ですが、その治癒メカニズムは不明な点が多いのが現状です。今回表彰いただきました論文では、術前の根尖部組織の残存具合に応じて、治癒形態が4パターンに分かれることを報告しました。これまでリバスクラリゼーションの治癒形態が多様であることは示されていたものの、その予後予測は不可能でした。今回の我々の研究結果からは、造影剤を用いたX線写真等で術前の根尖部組織残存量を評価することがリバスクラリゼーションの予後予測に有効である可能性が示唆されました。また本研究結果は、根未完成歯の歯内疾患を理想的な治癒(歯髄象牙質複合体の再生)に導くための新規治療法開発にも一助となると考えています。今後は歯髄細胞・歯根膜細胞・上皮細胞間の相互作用に着目し、より詳細な治癒メカニズムの解明を行う予定です。最後になりましたが、本研究の遂行を支えてくださった多くの方々に感謝申し上げます。

写真(上):野杁由一郎教授との記念写真
写真(下):実験に用いたラット用ラバーダムクランプと通常のラバーダムクランプ

枝並 直樹 枝並 直樹

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駒津 匡二
所属
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野
応募論文
Discriminating microbial community structure between peri-implantitis and
periodontitis with integrated metagenomic, metatranscriptomic, and network analysis
Frontiers in Cellular and Infection Microbiology (10巻,773,2020年)
研究発表
網羅的な細菌叢解析による歯周炎とインプラント周囲炎の菌叢構造比較
(2019年度 春季学術大会発表)
受賞コメント

この度は歴史ある日本歯科保存学会奨励賞を賜り大変光栄に存じます。
選考委員の先生方はじめ関係の皆様に心より御礼申し上げます。
受賞論文ではシーケンス技術により歯周炎とインプラント周囲炎の細菌叢を比較することで、各疾患に特異的な細菌叢の特徴を明らかにしました。両疾患は類似した症状を呈する口腔内を代表する複合感染症でありますが、インプラント周囲炎は歯周炎と比較し、より病態の進行が早く難治性疾患であると報告されています。今回、インプラント周囲炎は歯周炎と比較し、Solobacterium moorei、Prevotella intermedia といった細菌種が細菌ネットワーク内で中心的な役割を担っていることを明らかとし、そのような細菌叢の違いが両疾患の違いに影響を与えている可能性があることを報告しました。今後、更なる研究を進めることで、細菌学的な観点から歯周炎とインプラント周囲炎の病態解明を目指したいと考えております。
最後に岩田隆紀主任教授をはじめ、日頃よりご指導頂いております諸先生方にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

駒津 匡二 駒津 匡二

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小道 俊吾
所属
大阪大学大学院歯学研究科口腔分子感染制御学講座(歯科保存学教室)
応募論文
Protein S100-A7 Derived from Digested Dentin Is a Critical Molecule for Dentin Pulp Regeneration
Cells 8巻 1002頁(2019年発行)
研究発表
歯髄創傷治癒過程における Protein S100-A7の局在解析
(2018年度 春季学術大会発表)
受賞コメント

この度は日本歯科保存学会奨励賞という名誉ある賞を頂戴し、光栄に思います。本論文内容を簡単に紹介させて頂きます。
う蝕等により傷害を受けた象牙質-歯髄複合体において、MMP20により分解を受けた象牙質基質分解産物が歯髄の創傷治癒を促進することを我々は報告してきましたが、その分解産物は不明なままでした。そこで、プロテオミクスの手法を用いることでProtein S100A7等のタンパクの同定に成功し、これらが歯髄幹細胞の機能を促進することで、傷害を受けた歯髄を治癒に導くことを明らかにしました。本結果より、歯髄の創傷治癒を促進する分子を応用した、次世代の歯髄保存療法に用いる治療薬の開発へと繋がることが期待されます。
私の研究の端緒は、英国で歯髄生物学を学んだ高橋雄介講師の「歯髄が本来持つ創傷治癒メカニズムを解明し、その生体反応を模倣した生物学的な覆髄材を開発したい」という着想から始まり、先輩方の研究を経て本研究が結実したと考えています。現在も継続した研究を展開しており、近い将来に全く新規の覆髄材が開発される予定です。最後に、ご指導頂いた林 美加子教授、高橋雄介講師を始め皆さまに御礼申し上げます。

小道 俊吾 小道 俊吾

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砂田(奈良)圭介
所属
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 口腔機能再構築学講座歯髄生物学分野
応募論文
Anti‐inflammatory roles of microRNA 21 in lipopolysaccharide‐stimulated human dental pulp cells
Journal of Cellular Physiology 234巻 21331頁~21341頁
研究発表
Lipopolysaccharide 刺激されたヒト歯髄細胞における microRNA21 発現を介した炎症性メディエーター産生抑制メカニズム
(2018年度 秋季学術大会発表)
受賞コメント

近年COVID-19ワクチンで注目を集めているmRNAですが、RNAには旧来より知られているmRNA、rRNA、tRNA以外に、miRNAやlncRNAなどが存在します。このうち、miRNAは21-25塩基の1本鎖RNA分子で、標的mRNAに結合し翻訳抑制を行うことでタンパク質産生を抑制します。miRNAが介する転写抑制は、発生、細胞増殖・分化、アポトーシス、代謝といった広範な生物学的プロセスに関わっています。今回、miRNAに属するmiR-21が、ラット実験的歯髄炎において発現が誘導されること、LPSに刺激された培養ヒト歯髄細胞からの炎症性メディエーター発現を負の方向に制御することについて報告しました。
この研究を遂行するにあたり、終始温かく見守って下さり、数多くの助言をくださった興地隆史教授に深く感謝致します。研究指導者である川島伸之先生には、研究の方向性について逐一ディスカッションをさせていただき、その度に貴重な知見をいただきました。研究室のメンバーからは率直なコメントや実験の協力など、常に助けてもらい精神的にも支えらえました。心より深く感謝致します。本当にありがとうございました。

砂田(奈良)圭介 砂田(奈良)圭介

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長谷川大学
所属
九州大学病院歯内治療科
応募論文
MEST Regulates the Stemness of Human Periodontal Ligament Stem Cells
Stem Cells International Volume 2020,Article ID 9672673
研究発表
新規幹細胞関連因子 MEST がヒト歯根膜細胞の幹細胞転換に及ぼす影響
(2018年度 春季学術大会発表)
大和 寛明
所属
九州大学大学院歯学府口腔機能修復学講座歯周病学分野
応募論文
Combined application of geranylgeranylacetone and amelogenin promotes angiogenesis and wound healing in human periodontal ligament cells
Journal of Cellular Biochemistry  122巻 7号 716~730頁(2021年発行)
研究発表
アメロジェニンおよび胃潰瘍治療薬テプレノンが歯根膜細胞機能に与える影響
(2019年度 春季学術大会発表)
受賞コメント

この度、2021年度日本歯科保存学会奨励賞の受賞に際して、表彰状及び副賞を頂戴し、誠にありがたく、厚くお礼申し上げます。
私たちは、エナメルマトリックスタンパクの主成分であるアメロジェニンとGRP78との複合体がヒト歯根膜細胞に対し、創傷治癒並びに血管新生に影響を与えるという生理的機能解析を行いました。この事は、歯周組織再生のための新たな治療法ならびに新規治療薬としての可能性を示唆しています。
今後もこの受賞を励みに、歯科保存学の更なる発展に日々努めていきたいと思います。
最後に、今回の受賞は、所属する九州大学病院歯周病学分野の西村教授をはじめ諸先生方のご指導とご協力の賜物と存じ、この場をおかりして、深く感謝申し上げます。

大和 寛明 大和 寛明

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日本歯科保存学会 優秀発表賞

2020年度 年間優秀論文賞

保存修復学分野(カボデンタル優秀論文賞)「A Preliminary Study on Remaining Enamel Thickness Measurement using Time-Domain Optical Coherence Tomography」(63巻4号掲載)
著者
黒川弘康, 髙見澤俊樹, 飯野正義, 新井友依子, 高宮 寛, 若松賢吾, 横山宗典, 飯島達也, 宮崎真至
筆頭著者所属
日本大学歯学部保存学教室修復学講座
歯内療法学分野(松風優秀論文賞)「難治性根尖性歯周炎における抗菌ナノパーティクル含有ナノバブル水による根管内除菌効果の検討」(63巻1号掲載)
著者
庵原耕一郎, 中島美砂子
筆頭著者所属
国立長寿医療研究センター幹細胞再生医療研究部
受賞コメント

庵原耕一郎

この度は栄えある日本歯科保存学会の優秀論文賞に表彰していただき、誠にありがとうございます。受賞論文は感染根管治療におけるナノバブルとナノパーティクルの除菌の有用性についてとその後の歯髄再生について報告したものです。これまで私共は抜髄根管における歯髄再生治療について発表してまいりましたが、今後感染根管治療にこれを応用するにあたっては根管の除菌、異物の除去は必須であると考えており、今回の論文は今後の再生治療の一つの解になればと考えております。一方で、実際の感染根管治療は、今回の動物モデルのように単純ではないと考えられ、研究はまだ道半ばで、現在もより臨床に応用できる研究を続けているところです。
また、今回の表彰は、私にとって身に余る栄誉であるだけでなく、これまでの研究を振り返る良い機会となりました。研究を始めてから、上司や先輩、同輩や後輩の皆さん、そして大学関係、企業の方々など、たくさんの人たちから多くのことを教わり、さまざまな経験をさせてもらいました。今回の受賞は皆様のおかげであると心から感謝申し上げるとともに、今後とも変わらぬご指導ご鞭撻賜りますようお願い申し上げます。

庵原耕一郎

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歯周病学分野(ジーシー優秀論文賞)「高齢双生児の歯周病病態と遺伝・環境要因の影響度」(63巻3号掲載)
著者
池上久仁子, 山下元三, 三木康史, 久留島悠子, 高阪貴之, 鈴木美麻, 榎木香織, 松田謙一, 北村正博, 池邉一典, 大阪ツインリサーチグループ, 村上伸也
筆頭著者所属
大阪大学歯学部附属病院口腔治療・歯周科
受賞コメント

池上久仁子

この度、日本歯科保存学雑誌におきまして年間優秀論文賞を頂き、大変光栄に思います。
本研究は、大阪大学のツインリサーチセンターで行われた歯科班の調査のうち、高齢者を多数含む双生児集団を対象として、遺伝要因・環境要因が歯周病の病態へ及ぼす影響度を統計学的に検討したものです。センターの設立は2009年で、私が入局した2011年には既に研究調査が開始されていました。研修医の私は、上級医の先生の予定表にあった「双子検診」の記載を目にし、「なんてわくわくする研究なんだ!」と興奮した記憶があります。私自身も検診に参加する中で、双生児ペア間の口腔内状態の類似度が、高齢である程小さくなることに大変興味を感じました。高齢者の歯周病の臨床像を双生児法を用いて実証研究した貴重な経験は、現在おこなっている「歯周組織の細胞老化」をテーマとした細胞生物学的研究に大きな影響を及しています。
最後になりましたが、研究の遂行や発表にあたり御指導頂きました本学口腔治療学教室の村上伸也教授、山下元三講師、歯科補綴学第二教室の池邉一典教授と御協力下さいました先生方、ならびに研究に参画して頂いた被験者の皆様に心より感謝申し上げます。

池上久仁子

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2020年度春季学術大会(第152回)優秀ポスター賞

保存修復学分野(カボデンタル優秀ポスター賞)「歯石に含まれるフッ素性アパタイトの19F-MASおよび 1H-31P CP/MAS固体NMRによる解析」(P.2)
演者
小川友子、林 文晶、平石典子、田上順次
筆頭演者所属
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科う蝕制御学分野
受賞コメント

小川友子

このたびは第152回日本歯科保存学会学術大会の優秀ポスター賞を頂戴し大変光栄に存じます。選考委員の先生方,そして理事の先生方にこの場をお借りして御礼を申し上げます。
本研究は歯石にフッ素が取り込まれてしまうことで、フッ化物応用によるう蝕予防の効果が限局的になる可能性に着目したものです。研究では歯石に潜在するフッ素の化学的状態について固体NMR分析を行い、19F-MAS法および1H-31P CP/MAS法により解析を行いました。フッ化物は歯石が形成される過程で多様な状態で取り込まれており、エナメル質への効果は限局的であることが結果として示唆されました。注目すべき点は歯石には耐酸性の強いフルオロハイドロキシアパタイトが多数存在していたことです。
今後の課題としましては、歯石中のフッ化物が二次的間接的にう蝕予防にどのような効果をもたらすのか,さらなる検討が必要であると考えております。
最後にう蝕制御学分野島田康史教授、田上順次前教授ならびに、 指導教員の平石典子先生をはじめ、日頃よりご指導頂いております諸先生方に心より感謝申し上げます。

小川友子

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歯内療法学分野(松風優秀ポスター賞)in vitro ・ in vivo における各種バイオセラミック系シーラーのアパタイト析出能に関する研究」(P.3)
演者
イブンベラル ラジサイフラー、枝並直樹、白柏麻里、吉羽邦彦、大倉直人、吉羽永子、遠間愛子、竹内亮祐、野杁由一郎
筆頭演者所属
新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔健康科学講座う蝕学分野
受賞コメント

イブンベラル ラジサイフラー

I am very honoured to receive the Matsuzake Excellent poster award. In recent times, the use of bioceramic-containing material has gained popularity in endodontic. Apatite formation is one of the main characteristics of the bioceramic materials through which biological advantages are elicited. However, there is a lack of information regarding the Apatite-forming ability (AFA) of newly developed materials under in vivo condition. We assessed the AFA of 3 different bioceramic based root canal sealers using in vitro and in vivo models. In the in vivo rat subcutaneous implantation model, only one sealer was able to produce apatite on the surface, whereas in the in vitro condition using Simulated Body Fluid (SBF), all sealer had, similar response, formed apatite. This result shows that the bioceramic sealers have different AFA. We are now assessing the AFA of these materials in a specific in vitro condition to find out an optimum environment that produces in vivo like results.
I am grateful to my family, my supervisor and other teachers for their immense support and patience throughout the research and encouraging me to take part in the excellent poster competition.

イブンベラル イブンベラル

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歯周病学分野(ジーシー優秀ポスター賞)「メタトランスクリプトーム解析を用いた歯周疾患ステージにおける細菌種間のネットワーク構造と機能組成の比較」(P.7)
演者
根本 昂、芝多佳彦、渡辺孝康、小柳達郎、駒津匡二、片桐さやか、竹内康雄、岩田隆紀
筆頭演者所属
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野
受賞コメント

根本 昂

この度は第152回日本歯科保存学会学術大会にてジーシー優秀ポスター賞をいただき、大変光栄に存じます。本研究では、プラーク中のRNAを試料としてメタトランスクリプトーム解析を行い、健常、歯肉炎、歯周炎の各ステージにおける細菌叢の特徴や存在する細菌活動性を調べ、比較検討しています。結果として、各ステージで認められる活動性の高い細菌種やこれらを中心に構成される細菌ネットワークの構成、機能プロファイルに明らかな違いが見られました。また、ネットワーク解析により、複数の細菌種が互いに影響し合いながら、より病原性の高い細菌叢へと変化していくであろうことが推測されました。本研究結果は、細菌学的情報を指標とした歯周病の早期発見・早期治療法の開発につながると考えています。
今後も歯周病に関する細菌学的な研究を行い,新たな治療法開発の手がかりを発見できるよう,日々精進してまいります。
最後に岩田隆紀先生,竹内康雄先生、芝多佳彦先生をはじめ,日頃よりご指導頂いております共著者の先生方にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。

根本 昂 根本 昂

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2020年度秋季学術大会(第153回)優秀ポスター賞

保存修復学分野(ジーシー優秀ポスター賞)「う蝕深さとコンポジットレジン修復後2年間における歯内治療発生率の関係性」(P.1)
演者
佐藤隆明、田上順次
筆頭演者所属
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科う蝕制御学分野
受賞コメント
佐藤隆明
このたびは2020年度日本歯科保存学会秋季学術大会(第153回)の優秀ポスター賞をいただきまして,大変光栄に存じます。選考委員の先生方はじめ関係の皆様にこの場をお借りして御礼を申し上げます。今回の受賞を励みとして,今後も歯科保存学の更なる発展のために、より一層研究に励みたいと思います。
歯内療法学分野(カボデンタル優秀ポスター賞)「ニッケルチタン製ロータリーファイル形成時の根尖方向荷重の違いが根管追従性, 根管形成中の応力, 形成時間に与える影響」(P.6)
演者
牧圭一郎、海老原新、春日柚香、大森智史、雲野 颯、中務太郎、木村俊介、興地隆史
筆頭演者所属
東京医科歯科大学(TMDU)大学院医歯学総合研究科口腔機能再構築学講座歯髄生物学分野
受賞コメント

牧圭一郎

今回,2020年度日本歯科保存学会秋季学術大会(第153回)にてポスター発表をさせて頂く機会を頂き,優秀ポスター賞という名誉ある賞を頂いたことに,心より感謝申し上げます.我々の研究班では,NiTiファイルによる根管形成の規格化解析というテーマで,所属研究班で開発した,「自動根管形成・応力解析装置」を用いて,NiTiファイルの操作パラメーターに焦点を当てた研究を活発に行っています.その一環で,NiTiファイルでの根管形成中時の根尖方向荷重の違いが,根管形成に与える影響についての解析を本研究では行いました.根管形成中の根尖方向荷重を1, 2, 3Nに設定し,ProTaper NEXTを用いて,湾曲根管模型に対して根管形成を行い,その際の根管追従性,形成中に生じる垂直荷重およびトルク,形成時間を計測した結果,大きい根尖方向荷重で根管形成を行った場合,根尖部での根管追従性が向上し,形成時間も短縮しましたが,形成中に生じる応力は大きくなる傾向を認めました.今後は,様々な機械的性質のNiTiファイルに対しても解析を行うことで,NiTiファイルの操作方法の更なる有用な指標が得られるように,研究を発展させていきたいと考えています.

牧圭一郎 牧圭一郎

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歯周病学分野(松風優秀ポスター賞)「歯肉幹細胞由来エクソソームはmiR-1260bによるRANKL阻害により歯槽骨吸収を抑制する」(P.7)
演者
中尾雄紀、福田隆男、渡邊ゆかり、林千華子、川上賢太郎、豊田真顕、四本かれん、大和寛明、新城尊徳、田中 麗、讃井彰一、西村英紀
筆頭演者所属
九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯周病学分野
受賞コメント

中尾雄紀

この度、2020年度日本歯科保存学会秋季学術大会(第153回)のポスター賞の受賞に際して、表彰楯及び副賞を頂戴し、誠にありがたく、厚くお礼申し上げます。
今回の受賞は、所属する九州大学病院歯周病学分野の西村教授や福田先生をはじめ教室の皆様のご指導とご協力の賜物と存じ、この場をおかりして、深く感謝申し上げます。
本研究では、マウス歯周炎モデルを用いて、GMSCs由来エクソソーム注入時の歯槽骨吸収抑制効果を確認しました。また、骨吸収抑制効果の分子基盤の解明の為、in vitroでヒト初代歯根膜細胞にて、GMSC由来エクソソームが破骨細胞活性化因子であるRANKLの発現を抑制する事を確認しました。またGMSCsをTNF-α前処理する事でその抗炎症作用が増強しましたが、GMSCs由来エクソソームの内包するmiRNAがその効果の一端を担っている事を確認しました。
今後もこの受賞を励みに、研究に邁進します。どうぞ宜しくお願いします。

中尾雄紀

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※選考過程につきましては、下記をご覧ください。

2021年度 日本歯科保存学会学会賞・同学術賞・同奨励賞選考経過および結果(PDF)
日本歯科保存学会 優秀発表賞(PDF)