新型コロナウイルス感染症感染状況を鑑み、日本歯科保存学会2022年度春季学術大会(第156回)および秋季学術大会(第157回)における名誉会員証授与式および各賞の表彰式は、誠に残念ながら中止となりました。
会員の皆様の前で表彰する機会がございませんでしたので、ここに新名誉会員および学会賞・学術賞・奨励賞の受賞者の先生方をご紹介申し上げます。
一昨年度・昨年度に引き続きホームページ上でのご紹介となりましたが、今後は学会場で多くの会員の皆様とお会いできることを期待しております。
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
理事長 石井信之
※50音順・敬称略
※受賞者の所属および職については申請・推薦時のものです。
名誉会員
- 所属
- 福岡歯科大学・教授
- 就任コメント
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福岡学園病院顧問 阿南 壽(前・福岡歯科大学口腔治療学講座歯科保存学分野教授)
この度、日本歯科保存学会より名誉会員証ならびに2022年度学会賞受賞の栄に浴しました。大変光栄で名誉なことと石井信之理事長はじめ日本歯科保存学会会員の皆様に心より厚く御礼申し上げます。また、長年にわたり、ともに教育、研究・臨床活動を行ってきました福岡歯科大学口腔治療学講座歯科保存学分野の皆様に深謝申し上げます。これまでは、大学で「歯科医の良心」ともいわれる歯内療法を誠実に行うことができる歯科医師の育成を目標として努めてまいりました。今後は、病院の顧問として、地域の皆様から信頼され続ける病院となりますよう、微力ながら貢献していきたいと考えています。
ウイズコロナの時代における歯科治療への不安感を軽減するためにも、日本歯科保存学会が国民の皆様に対して、「安心・安全で適切な歯科保存治療」について発信している学術団体であることをさらに知っていただくとともに、日本歯科保存学会学術大会が、これからの「歯科保存治療」をより発展させるための絶好の機会となることを衷心より祈念申し上げます。日本歯科保存学会の益々のご発展を心より願っております。写真(上):阿南 壽
写真(下):阿南 壽(左)、松﨑英津子教授(右:福岡歯科大学歯科保存学分野教授)と歯科保存学分野の皆さん続きを読む
- 所属
- 岡山大学病院・教授
- 就任コメント
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岡山大学名誉教授 鳥井康弘
この度は、日本歯科保存学会名誉会員にご推挙、ご承認いただき、心より感謝いたします。
また、日本歯科保存学会学会賞を授与いただき誠に恐縮しております。私は、1982年に貴学会に一般会員として入会し、2004年より理事をさせていただきました。また、1995年に貴学会の認定医専門医の資格を取得し、歯科保存治療を主とする臨床をしてまいりました。学会の発展にさほどの貢献もできなかったにも関わらず、学会賞の授与並びに名誉会員としていただきましたことを厚く御礼申し上げます。
2022年3月末をもちまして、岡山大学を定年退職し、現在は非常勤職員としてではありますが、歯科医療施設で地域歯科医療に従事しております。残念ながら、研究、教育は継続できてはおりませんが、臨床を通して専門医としての技能の向上を継続していきたいと考えております。
最後に、日本歯科保存学会の益々のご発展並びに会員の皆様のご健勝とご活躍を祈っております。続きを読む
- 所属
- 日本大学松戸歯学部・教授
2022年度日本歯科保存学会学会賞
- 所属
- 福岡歯科大学・教授
- 受賞コメント
- 同上
- 所属
- 岡山大学病院・教授
- 受賞コメント
- 同上
- 所属
- 日本大学松戸歯学部・教授
2022年度日本歯科保存学会学術賞
- 所属
- 神奈川歯科大学歯科保存学講座歯周病学分野
- 応募論文
- Association of Periodontal Status, Number of Teeth, and Obesity
: A Cross-Sectional Study in Japan
Norio Aoyama, Toshiya Fujii, Sayuri Kida, Ichirota Nozawa,
Kentaro Taniguchi, Motoki Fujiwara, Taizo Iwane, Katsushi Tamaki,
Masato Minabe
Journal of clinical medicine, 10:E208(2021)
上記他4編 - 受賞コメント
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このたびは、栄誉ある日本歯科保存学会学術賞をいただき、たいへん光栄に存じます。本学会理事長、選考委員の先生方をはじめ、関係のみなさまに心より御礼申し上げます。
これまで、循環器疾患を軸に、歯周病と全身とのかかわりについて研究を続けてまいりました。歯科保存を通じて全身の健康に寄与できると一般の方に周知することが重要だと考えております。その根拠の一端を研究成果としてお示しできるよう、今後の研究活動に励んでまいります。
研究の遂行にあたり、これまでご指導賜りました故・鈴木淳一先生、和泉雄一先生、故・S. Offenbacher先生、三辺正人先生、小牧基浩先生をはじめ、国内外の共同研究者のみなさま、ご指導・ご支援いただいた関係各位に、心より感謝申し上げます。続きを読む
2022年度日本歯科保存学会奨励賞
- 所属
- 大阪大学大学院歯学研究科口腔分子感染制御学講座(歯科保存学教室)
- 応募論文
- Performance of a Biodegradable Composite with Hydroxyapatite as a Scaffold in Pulp Tissue Repair
Polymers (Basel) 12巻 937頁 (2020年発行) - 研究発表
- 生物学的覆髄材料の臨床的評価を目指したラット覆髄モデルの開発
(2019年度 秋季学術大会発表)
- 所属
- 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯薬専攻歯周病学分野
- 応募論文
- Metformin accelerates wound healing by Akt phosphorylation of gingival
fibroblasts in insulin-resistant prediabetes mice
Journal of Periodontology online ahead of print (2021年) - 研究発表
- 高脂肪食誘発型糖尿病マウスにおける歯肉創傷治癒に対するメトホルミン投与の効果
(2021年度 春季学術大会発表) - 受賞コメント
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この度は栄誉ある日本歯科保存学会奨励賞を賜り、大変光栄に存じます。選考委員の先生方はじめ関係の皆様に心より御礼申し上げます。
現在、わが国において糖尿病患者及び境界型糖尿病患者は生活習慣と社会環境の変化に伴って増加傾向にあることが指摘されています。糖尿病は慢性的な高血糖を特徴とする代謝性疾患であり、糖尿病患者では歯周組織の創傷治癒が遅延することが知られています。受賞論文では、ビグアナイド系糖尿病治療薬であるメトホルミンをインスリン抵抗性の前糖尿病モデルマウスに投与することで歯肉の創傷治癒の遅延が回復したことを報告しました。また、メトホルミンは、インスリンシグナルにおけるPI3K/Akt/VEGF経路の活性化を介して、高血糖により低下した歯肉線維芽細胞の増殖能および遊走能を改善する可能性が示唆されました。今後、更なる研究を進めることで、糖尿病患者に対する歯科治療への一助になると考えております。
最後に、御指導いただいた岩田隆紀先生、水谷幸嗣先生をはじめ、本研究の遂行を支えてくださった多くの先生方、支援してくださった関係皆様にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。続きを読む
- 所属
- 岡山大学病院歯科・歯周科部門
- 応募論文
- The Fungal Metabolite (+)-Terrein Abrogates Ovariectomy-Induced Bone
Loss and Receptor Activator of Nuclear Factor-κB Ligand–Induced
Osteoclastogenesis by Suppressing Protein Kinase-C α/βII Phosphorylation
Frontiers in Pharmacology, 2021Jun 8;12;674366
doi: 10.3389/fphar.2021.674366.(2021年発行) - 研究発表
- 真菌代謝産物 (+)-terrein がマウス骨粗鬆症モデルにおける骨代謝に及ぼす影響
(2020年度 秋季学術大会発表) - 受賞コメント
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この度は栄えある日本歯科保存学会奨励賞を賜りまして,大変光栄に存じます。選考委員の先生方をはじめ,関係者の皆様方に心より御礼申し上げます。
本受賞論文では,真菌代謝産物(+)-TerreinがRANKL誘導性のPKCα/βIIのリン酸化を抑制することによって破骨細胞分化を抑制し,骨芽細胞の分化に影響を及ぼすことなく,OVXマウスにおける大腿骨吸収を抑制することを明らかにしました。本研究結果は,骨粗鬆症を含む骨吸収疾患に対する骨吸収抑制薬としての(+)-Terreinの可能性について新たな知見を提供しうるものと考えております。今後,引き続き研究を進めることで,多角的な観点から(+)-Terreinが骨代謝におよぼす影響について,更に深く追求していきたいと考えております。
最後に,日頃よりご指導いただいております髙柴正悟教授,大森一弘先生,ならびに岡山大学歯周病態学分野の諸先生方にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。続きを読む
- 所属
- 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野
- 応募論文
- Discrimination of Bacterial Community Structures among Healthy, Gingivitis,
and Periodontitis Statuses through Integrated Metatranscriptomic and Network Analyses
mSystems オンライン (2021年発行) - 研究発表
- メタトランスクリプトーム解析を用いた歯周疾患ステージにおける細菌種間のネットワーク構造と機能組成の比較
(2020年度 春季学術大会発表) - 受賞コメント
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この度は日本歯科保存学会奨励賞という名誉ある賞を頂戴し、大変光栄に存じます。選考委員の先生方はじめ関係の皆様に心より感謝申し上げます。
受賞論文では口腔内の健常、歯肉炎、歯周炎部位から採取されたプラーク(細菌叢)中の RNAを解析することで、疾患の進行に寄与し、病態を特徴づける指標となる細菌を明らかにしました。歯周病罹患部位の細菌叢は健常部位と異なることがこれまでも報告されていましたが、これらの研究は細菌のDNA情報に基づき解析されたものがほとんどでした。
今回、細菌のRNAを解析対象とすることで、臨床症状をより正確に反映した細菌叢解析が可能となりました。その結果、Fretibacterium fastidiosum やEubacterium nodatum といった細菌種が従来歯周病原細菌とされてきた細菌種以上に、疾患の発症や進行に伴い活動性が高くなることが明らかになりました。今後、更なる研究を進めることで、これら細菌学的情報を指標とした歯周病の早期発見・早期治療法の開発を目指したいと考えております。
最後に岩田隆紀主任教授をはじめ、日頃よりご指導頂いております先生方にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。続きを読む
- 所属
- 九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯科保存学研究分野
- 応募論文
- Expression and Function of Dopamine in Odontoblasts
Journal of Cellular Physiology 235巻 4376頁~4387頁(2020年発行) - 研究発表
- チロシン水酸化酵素は歯髄幹細胞の象牙芽細胞様分化を促進する
(2021年度 秋季学術大会発表)
- 所属
- 九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯周病学分野
- 応募論文
- Amelogenin Downregulates Interferon Gamma-Induced Major
Histocompatibility Complex Class II Expression Through Suppression of
Euchromatin Formation in the Class II Transactivator Promoter IV Region in
Macrophages
Frontiers in Immunology 11巻709頁(2020年発行) - 研究発表
- アメロジェニンはマクロファージによる抗原提示を抑制させる。
(2019年度 春季学術大会発表) - 受賞コメント
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この度は、2022年度日本保存学会奨励賞という名誉ある賞を頂戴し大変光栄に存じます。選考委員の先生方をはじめ関係の皆様に心より御礼申し上げます。
私たちは、エナメルマトリックスタンパクの主成分であるアメロジェニンが核内移行しヒストン修飾を誘導することで、マクロファージによる抗原提示を抑制するという現象を見出しました。アメロジェニンはTh1細胞による細胞性免疫を中心とした免疫応答の発動を抑制し、結果的に歯周外科処置後の創傷治癒を促進する可能性が示唆されました。よって、アメロジェニンは、歯周組織の再生だけではなく、自己免疫疾患等に対しての標的治療、ならびに臓器移植に対して副作用の無い拒絶抑制剤として応用できる可能性があると考えています。
最後に、ご指導・ご鞭撻賜りました西村英紀教授、讃井彰一講師を始め、共同研究者の先生方にこの場を借りて深く感謝申し上げます。続きを読む