理事長挨拶

特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
理事長 松尾敬志

理事長

日本歯科保存学会の理事長を拝命してから、はや半年が経ちました。そして、ますます歯の保存(口の中に歯を保つという意味です)の大切さを国民の皆様に知っていただきたいという思いが募って参りました。

超高齢社会というと高齢者の数が増えて行く社会と思われますが、実際は長生き社会になることと思います。確かに団塊の世代はもうすぐ後期高齢者となり、高齢者は増えて行くのですが、人間は何歳までも生きられるわけではないので、このまま高齢者が増え続けて行くことはありません。ただ平均寿命はまだ伸びて行くと予想されます。このことから言えるのは、今の子供たちは長生きできる、もしくは長生きしなければならない世代だということです。

書店では佐藤愛子さんの「九十歳。何がめでたい」や瀬戸内寂聴さんの「95歳まで生きるのは幸せですか?」など、老いに関する本が平積みにされています。誰しも寝たきりで長い余生を過ごすのは避けたいところではないでしょうか。言い換えれば、誰しも健康で幸福に長生きしたいと願っているということです。これには「美味しく食事をいただき、健康寿命を延ばすこと」がその基本になるのではと思われます。

これまでの歯科は、失った咀嚼機能(噛む機能)の回復に重点が置かれてきました。例えばむし歯になれば削って金属(インレーなど)で良く噛めるように治し、さらに入れた金属が取れず長持ちするように健全な歯質を犠牲にしてでも外れにくくすることもありました。また、歯がなくなれば、隣の歯を削ってブリッジを入れて噛めるようにしてきました。さらに失う歯が多くなれば、残っている歯を支えにして入れ歯を作り、噛めるようにしてきました。

しかし、今日の長生き社会は、このシステムでは対応できなくなっています。インレー・ブリッジなど人工物も摩耗や変形があり、そのため脱離やむし歯などによって再治療が必要となります。そして、再治療時にさらに歯を削ることになり、歯質や歯をますます失う原因となります。また、入れ歯は残っている歯に負担がかかり、歯の寿命を損ねる原因となります。一時代前の平均寿命の短かった時はこれでもやって行けましたが、今後の長生き社会では通用しないものと思われます。

それではどうすればよいかという問題となります。精巧なインプラントの開発、歯の再生など未来の技術が浮かびますが、私は親からもらった身体の一部である歯を大切にし、死ぬまで何とか使ってお墓にまで持って行きたいと願っています。皆様は如何でしょうか?もしそうであれば、それこそ歯科保存学の考え方そのもので神髄です。歯科保存学はある意味地味な学問ですが、その重要性を理解されてご支持いただければ幸甚です。

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