研究臨床トレンド

日本歯科保存学会の研究トレンド

日本歯科保存学会は、歯の硬組織疾患(保存修復学)、歯髄疾患や根尖性歯周組織疾患(歯内療法学)、および歯周疾患(歯周病学)を学術研究の対象としており、これらの原因・病態や予防・治療・管理の方法などについてのさまざまな情報を国内外に発信しています。

ここでは領域ごとに、活発な研究活動が展開されているテーマをご紹介します。

1. 保存修復学領域

  • 歯質への接着
    エナメル質や象牙質に接着する合成樹脂(接着性レジン)の開発は、我が国が世界をリードしている研究テーマの1つですが、本学会はその発展の歴史とともに歩んでいると言っても過言ではありません。近年のminimal intervention(最小限の侵襲によるう蝕の治療)の概念も、接着性修復材料の飛躍的な性能向上により、始めて実現したものと言えます。現在も、新たな接着技法の探索、新規接着システムの開発・評価、さらには接着を応用した新規臨床技法などに関する極めて多数の研究報告がなされています。
  • 審美性修復材料
    歯の美しさへの社会的な要求は益々高まりつつありますが、その実現を可能とするさまざまな歯冠色修復材料が研究されています。すなわち、コンポジットレジン(上述)やポーセレンに加えて、アルミナ、ジルコニアなどのセラミック材料の応用も近年盛んとなっており、これらの材料に用いる接着材(接着性レジンセメント)、あるいは材料の加工法、色調再現性、さらには臨床技法などについて多彩な研究が展開されています。
その他の主要テーマ
  • 修復物の長期耐久性
  • 初期う蝕検出法
  • minimal intervention

2. 歯内療法学領域

  • 歯髄生物学
    歯内療法の治療対象である歯髄や根尖部歯周組織の形態、機能あるいは病態について、幅広いテーマで基礎的研究が展開されています。例えば、傷害された象牙質・歯髄複合体の修復機構や根尖性歯周炎の病態への免疫機構の関わりについての分子・遺伝子レベルの研究が近年盛んとなりつつあり、臨床の基盤となる生物学的知見の蓄積がなされています。
  • 歯内療法用生体材料
    歯内療法で用いられるさまざまな生体材料の物性や生体反応が研究されています。とくに最近では、歯質接着性を備えたレジン系根管充填材や、mineral trioxide aggregateなど高い生体親和性を示す無機材料が注目されており、これらの理工学的特性や生体に及ぼす影響がさまざまな視点から追究されるとともに、臨床技法についても多くの報告がなされています。
  • 回転切削による根管形成
    根管形成は歯内療法の成否に大きく影響を及ぼす治療ステップですが、これを効率的に行うための回転切削器具が注目されています。特に、近年開発されたニッケルチタン合金製切削器具は、高い弾性や柔軟性を示すことから、湾曲した根管にも有効なものとして普及しつつあります。本学会ではこれらの器具の理工学的性質や切削特性についての多彩な研究成果が発表されています。
その他の主要テーマ
  • コーンビームCTの歯内療法への応用
  • 根管洗浄
  • 歯内疾患の細菌学

3. 歯周病学領域

  • 歯周病の病因論と疫学
    プラーク内の細菌が歯周病の基本的病原因子であることは周知の事実ですが、近年では歯周病の進行にかかわるさまざまなリスク因子、あるいは歯周病と全身疾患との関連などが、本疾患の病因として注目されています。本学会でも、喫煙や糖尿病などのリスク因子が歯周病の進行に関与するメカニズムの解明や新たなリスク因子の探索などを目指したさまざまな研究が実施されています。
  • ティッシュエンジニアリングによる歯周組織再生
    炎症により破壊された歯周組織(歯槽骨、軟組織)の再生を目指したさまざまな基礎的、臨床的研究が展開されています。近年では各種増殖因子の局所投与による歯周組織再生が注目されており、その有効性を示す多くの基礎的、臨床的研究が展開されています。さらに最近では、幹細胞移植などの新たな再生療法についても研究の展開がなされつつあります。
その他の主要テーマ
  • 歯周炎の免疫学
  • 歯肉歯槽粘膜および歯槽骨形成術
  • 歯周細菌叢
  • サポーティブペリオドンタルセラピー

4. 学際的トピックス

  • 歯の組織再生
  • 各種レーザーの臨床応用

日本歯科保存学会の臨床トピックス

日本歯科保存学会は、上に述べたような研究活動の成果を診療(歯科保存治療)や教育に反映させることを通じて社会に貢献することを目指しています。実際、本学会の会員のほとんどは、臨床の現場で歯科保存治療に携わる歯科医師です。本学会では学会誌(日本歯科保存学雑誌)や学術大会を通じて、歯科保存治療の発展につながるさまざまな情報の共有を図るとともに、社会への発信を行っています。

日本歯科保存学雑誌には認定研修会での講演内容が総説論文として掲載されており、歯科保存治療の臨床トピックスに直結した内容となっています。ご希望のタイトルをクリックして下さい。

受賞論文

日本歯科保存学雑誌では、本学会学術賞受賞者が最新の成果を簡潔にまとめた論文を、ミニレビューとして掲載しています。これらは本学会の研究、臨床トピックスと密接にかかわるものです。
ご希望のタイトルをクリックして下さい。

  • 日本歯科保存学会2024年度秋季学術大会(第161回)
  • 2022年度名誉受賞者のご紹介
  • 2022年度各賞受賞者のご紹介
  • 「日本歯科保存学会」を名乗る不審な電話にご注意ください。
  • 利益相反(COI)
  • う蝕治療ガイドライン
  • J-stage「日本歯科保存学雑誌」掲載論文をJ-STAGEで公開しています。 掲載論文は学術論文検索エンジン「Google Scholar」 で検索できます。